女川七十二候 – ページ 2 – 女川さかな手帖

女川七十二候:冬至 │ 末候[ 滑多鰈迎 – なめたがれいはるをむかう ]

いよいよ大晦日となりました。
年の瀬、いかがお過ごしでしょうか。

二十四節気「冬至」の末候は、七十二候では「雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)」。
雪に覆われた大地の土の中で、もう麦が芽吹き始めている頃なのだそうです。

二十四節気のうえでは、まだまだ春は先ですが、現代の暦では、明日から新年。新春とも
よばれます。
「女川七十二候」は「滑多鰈迎(なめたがれいはるをむかう)」です。

他の地域ではババガレイと呼ばれるこのカレイは、ヌメリが多いことから宮城では「滑多
鰈=ナメタガレイ」と呼ばれます。
この時期、寒くなるにしたがって魚体は大きく肉厚になり、宮城県沖で漁がさかんになり
ます。

年越しの食事に煮付けなどにして食べる「年取り魚」として親しまれています。
子孫繁栄の縁起を担ぎ、子持ちのメスが重宝され、年末の時期は価格があがります。

皆さんの大晦日の食卓は、どんなでしょうか。
無病息災を願って、穏やかな新年を迎えられますように。

女川七十二候:冬至 │ 次候[ 真鱈腹満 – まだらはらみつる ]

さあ、いよいよ今年も残すところあとわずか。

二十四節気「冬至」の次候は、七十二候では「麋角解(さわしかのつのおつる)」。
「麋(さわしか)」は大型の鹿のことで、オスの角が年に一度、古い角を落として生え変
わる、いまはそんな時期なのだそうです。

そしてこの時期の宮城の海はというと…
「女川七十二候」は「真鱈腹満(まだらはらみつる)」です。

真鱈は通年漁獲される魚ですが、旬と呼ばれるのは産卵に向け浅いところにやってくる
十二月から三月頃です。
身の味も寒くなるほど美味しくなるのですが、ちょうど腹に抱えた白子や卵も絶品で、ま
さに冬の味覚です。

オスは身も美味しいですが、メスは卵を持つから身が少し痩せていると思います。
そんな理由もあってか、マダラはほかの魚と違い、メスよりオスの方が価値の高い魚です
が、やはりその理由は、白子にあるでしょう。
マダラの卵は、タラコではなく(タラコはスケトウダラの卵)、マダラコと呼ばれます。

主に底引き網で北海道や東北で水揚げされる魚で、宮城は、女川港では現在はほとんど見
ないですが、主に石巻港で立派な真鱈が揚がっていますよ。

まさに捨てるところのない真鱈、この冬もぜひ、味わってみてください。(^-^)

女川七十二候:冬至 │ 初候[ 海鞘産卵 – ほやさんらんす ]

さあ、いよいよ今年も残すところあとわずか。

二十四節気「冬至」の末候は、七十二候では「乃東生 (なつかれくさしょうず)」です。
乃東とは、冬に芽を出し夏に枯れる、紫色の花を咲かせる「うつぼくさ」のことだそうです。
そんな時期の「女川七十二候」は「海鞘産卵 (ほやさんらんす)」です。

ほやは、知れば知るほど興味深い生き物です。
貝ではありません。生物学的には、尾索動物亜門・ほや綱に分類されるそうです。

その味わいも、ほかの食べ物には絶対にない特徴がありますよね。
つくづく不思議な生き物です。

三陸でほやといえば「まぼや」のことを指しますが、ほやは雌雄同体で、ちょうど冬至の頃、出水孔から精子と卵子を交互に出します。
ほやには、ツノのようなものがふたつあり、ひとつは(+)、もうひとつは(-)の形を
しています。(+)が入水孔、(-)が出水孔です。

以前、漁師さんから「ほやはクリスマスイブの夜に産卵するんだよ」と言われ、ロマンチックだなあと思ったのを覚えています(^-^)

受精し2日ほどたった幼生は自分で泳いで養殖用のロープや牡蠣殻にくっつき、その後はそこで動くことなく大きくなり、一生を過ごします。

それから二年半ほどで、美味しいほやとなり、出荷されます。

女川七十二候:大雪 │ 末候[ 海鼠在岸 – なまこきしにあり ]

今年も残すところあと2週間、年末年始のご予定はいかがでしょうか。

二十四節気「大雪」の末候は、七十二候では「鮭魚群 (さけのうおむらがる)」です。
意味は文字通り、鮭が群がって川を遡上するということですが、実際には、鮭が戻ってくるのは、もっと前でしたね。

「女川七十二候」は「海鼠在岸 (なまこきしにあり)」です。

ナマコは冬になると活動が盛んになり、女川では十一月に解禁となり、漁は三月まで続きます。
箱眼鏡漁などで獲ることが多いですが、許可を得て素潜りで獲る漁師さんもいます。

ナマコといえば、なまこの内臓を塩辛にした「このわた」が珍味ですね。
宮城では、さらにそれを「ほや」と合わせた「莫久来(ばくらい)」というのがあります。
酒のアテには最高の一品です。
当店では現在のところ、このわたやばくらいは扱っていませんが、ぜひ、ほやと合わせて
味わってみてほしいです。

ナマコのうち、市場で人気(高値)なのは、赤ナマコといって、赤いナマコです。
ナマコは切ってから熱湯で湯通しすると柔らかくなり酢醤油などで食べるのですが、赤ナマコに関しては湯通しの必要がないくらい柔らかいです。
女川ではもっぱら黒いナマコが多いですが、私はこちらのほうが好きです(^-^)

女川七十二候:大雪 │ 次候[ 槍烏賊長 – やりいか、ちょうず ]

12月も中盤になりました。

二十四節気「大雪」の次候は、七十二候では「熊蟄穴(くまあなにこもる)」です。
熊だけでなく、いろいろな動物が冬ごもりをする季節です。
淡水の魚の中には、体温も低下し冬眠状態でじっと動かなくなる魚もいますが、海の魚はでもピンピンしているものが多いですね。

「女川七十二候」は「槍烏賊長(やりいか、ちょうず)」です。

女川には、イカはアオリイカ、スルメイカ、ヒイカ、それぞれ入ってきますが、今はヤリイカが旬です。

槍のようにとがったヒレが名前になったヤリイカは、春から初夏の産卵期に向け群れで沿岸に集まり、この時期、大きく成長します。オスのほうが大きく、大きいものでは約40cmにもなります。メスは約25cmです。

ヤリイカは、透明度の高いものが新鮮かつ美味で、次第に白くなっていきます。
女川は産地ですので、透明なヤリイカが揚がりますよ。

食べ方は、当然刺身もよいのですが、長ネギと一緒に天ぷら、バター焼き、ボイルなど、火を入れても美味しいです。

産卵後に、ヤリイカはその1年の寿命を終えます。

今年のヤリイカは量が少なくサイズも小さい印象です。
大きく重いものほど高く取引されるヤリイカですが、女川の漁師さんは「意外と小さいもの方が柔らかくて美味しい」と話します。

いまが一番おいしい時期の、新鮮な女川のヤリイカも、機会があれば味わっていただきたいです。

女川七十二候:大雪 │ 初候[ 鰤脂身包 – ぶり、あぶらにみつつむ ]

今年も本格的に冬到来ですね。
暦の上では今日から二十四節気「大雪(たいせつ)」。山間部だけでなく平野部にも雪が降り、動物たちも冬ごもりを始める頃という意味です。
そして2週間後には、いよいよ冬至ですね。

東北というと雪が深いイメージが強いですが、女川をはじめ宮城県の沿岸の方は、それほど雪が多くありません。でも寒さはさすが東北です。

二十四節気「大雪」の初候は、本来は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」です。
重い灰色の雲が空を覆い、冬の本格到来です。
一方そんなこの時期、海ではブリが丸々と太ってきて、食卓は明るさを増してきます。
「女川七十二候」は「鰤脂身包(ぶり、あぶらにみつつむ)です。

出世魚として知られるブリは、小さいものから、稚魚(モジャコ)→ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと名前を変えます。ブリは、女川では概ね約80㎝以上のものを指します。
この時期、産卵に向けてエサをよく食べ脂がのって丸々太ってはりもでてくるブリはとても美味しく「寒ブリ」と呼ばれます。ブリは、俳句の冬の季語にもなっています。
大体11月後半くらいからまるっと太ってはりのある個体が出てくきます。

養殖は西日本で盛んで、寿司ネタハマチはこの養殖物であることが多いです(ハマチはワカシやイナダにあたります)。
天然物は日本海側で有名なため、女川エリアではそこまで注目されるものではないですが、
女川では年間を通してワカシサイズのものが定置網での水揚げがあります。

ブリですが、最近どんどん丸々してきたように思います。
水揚げされるブリの量が増えたというよりは、年中一定量水揚げがあるけれど、特に冬は
体長の割にパンパンに膨れた個体が見られるようになってくるという印象です。

寒い冬、家族で鍋を囲むのもよいですね(^-^)

ブリに似た魚に、ヒラマサがあります。
見分け方も記事にしてみましたので、ぜひどうぞ(^-^)
http://bit.ly/2qy6BJs

女川七十二候:小雪 │ 末候[ 平目身締 – ひらめのみ、しまる ]

二十四節気「小雪」の末候は、本来は「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」です。
本格的に冬の寒さが厳しくなるこの頃、橘の実が黄色く色付き始めるという意味です。
「女川七十二候」では、「平目身締(ひらめのみ、しまる)としました。

ヒラメは、初夏にかけてが産卵期で、産卵期に味が落ちるのはどの魚も同じですが、ヒラメもこの時期身が痩せて味が落ちてきます。
夏のヒラメは「ねこまたぎ」と呼ばれ猫も食べないくらいにおいしくない、などと言われます。
最近は養殖ものが出回り、あまり旬を意識することもなくなりましたが、旬は冬です。秋頃からエサを取りはじめ冬場に脂を蓄えてきたヒラメは、この時期水温も下がるため、身がしまって実においしくなります。c2j loisirs chateau gonflable

目利きのポイントは、背中の赤茶色いもの、つやのあるもの、腹がバニラ色のもの。
獲れた次の日に刺身にして食べるのが良いですが、煮付もとても美味しいですし、ひれ部分のエンガワはとくに美味で寿司ネタとしても人気ですよね。

生態はどんなかといいますと、地面に潜んで隠れ、獲物が近づくと大きな口と鋭利な歯で捕食します。カレイと比べると口が大きく、歯があることが特徴です。食べるのは、主に小魚や甲殻類です。

体表を保護色に変えて海底の色にカモフラージュできる「海のカメレオン」でもありますね。

女川七十二候:小雪 │ 次候[ 鮟鱇肝肥 – あんこうきもふとる ]

二十四節気「小雪」の次候は、本来「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」です。
意味は、北風が木の葉を払いよける季節ということですが、女川独自の七十二候「女川七十二候」では「鮟鱇肝肥(あんこうきもふとる)」です。

一般的に「アンコウ」と呼ばれるのは「キアンコウ」と呼ばれる種です。
別に「クツアンコウ」という種類がありますが、市場では区別されます。

産卵を夏に終えてエサをっぱい食べたアンコウは、この時期、肝(きも)も身も大きくな
ります。夏場を除いて漁獲のある種ですが、肝が大きくなってくるので今からの時期に値段が高くなってくる。
海のフォアグラと呼ばれる「あん肝」です(^-^)

アンコウは海底にいる魚、甲殻類を食べます。海底の砂に隠れて背びれにあるとげを小魚に見立てて揺らして魚類を誘い、そうして寄ってきたものを捕食します。

基本的にトロール船(底引き網)で獲れるものがほとんどですが、女川には定置網にかかるものも揚がります。

メスが大きくオスは小さいです。
メスは10㎏の大型、オスは5kgほどの大きさです。
メスは水温の高いところを好むため、常磐・大洗地域はメスが多く大型で「吊るし切り」
にして捌かれることが多いですが、福島から岩手にかけてはオスが多いため、吊るし切りはしません。

女川では、2月の中旬頃、毎年「あんこう祭り」が開催されます。
美味しいアンコウ汁も、自慢ですよ。

女川七十二候:小雪 │ 初候[ 鈍子汁入 – どんこ、しるにいる ]

二十四節気「小雪」の初候は、本来であれば「虹蔵不見(にじ、かくれてみえず)」で、
意味は、昼の時間がいっそう短くなって、虹が見えなくなる頃という意味ですが「女川七十二候」では「鈍子汁入(どんこ、しるにいる)」です。

「どんこ」という魚は、三陸女川では、冬の風物詩ともいえる魚です。
顔はブサイクなのですが、肝が美味しく、冬は「どんこ汁」にして、まるごといただきま
す。ぷりぷりとした白身の魚です。「鈍子汁入」というのはこの時期、どんこがどんこ汁に入れられることからついた名前です(笑)

「どんこ」は正式名称は「エゾイソアイナメ」または「チゴダラ」と呼ばれる魚ですが、
三陸では「どんこ」としか呼びません。enfant chateau gonflable
西日本でいう「どんこ」は、淡水の魚で、ちがう魚です。

どんこ汁、近日、レシピと合わせて「女川さかな手帖」のブログでも紹介したいと思います。
ぜひ、ご覧ください。